2016年04月22日

33)検証・都労委「明治乳業(市川工場)事件」(戸塚章介)。33)40年も生産に貢献してきた申立人らを「企業破壊者」と烙印を押したまま、話し合いさえ拒絶する。こういう会社を説得するのも労働委員会の務めではないか。



検証・都労委「明治乳業事件」 戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)




「明乳市川工場事件」余聞

 「検証・都労委『明治乳業事件』」が1年3ヵ月ぶりに終わりほっとしたとたん、思わぬところに愛読者がいることが判明した。私の批判の対象である当の明乳労務と弁護団である。

 昨27日、中労委で明乳全国事件の審問が行われた。時間前に控室に顔を出すと争議団長の小関さんが声をかけてきた。今日のこちら側証人に対する反対尋問用におれのブログが証拠として出されているというのだ。今年7月17日付のもので、全国事件の申立に至った経緯を綴っている。

 中に「この申立は和解対象者を明確にすることが目的で・・・」という記述がある。要するに全国事件は和解のために申立てたのであって、命令を求めて本格的に争うつもりはなかったのではないか、というわけだ。昨日の審問でも大阪の井村証人に対してそのような趣旨の質問があった。

 井村さんは「私たちは全国の仲間でかねてから差別是正のたたかいを起こす方針を決めていた」と言い切り、会社側弁護士もそれで尋問を打ち切った。それにしてもささやかな私のブログを鬼の首でも取ったように仰々しく中労委に証拠として提出する会社も会社だ。審問が申立人側の優位に進んでいることへの焦りなのだろう。

 おれは昨日の審問を聞いて中労委での明乳全国事件は勝負あったと確信した。格差の存在、会社の不当労行為意思、申立人らの正当な組合活動が余すところなく証明された。無理な屁理屈を並べた都労委の棄却命令が覆ることは確実だ。だが本件は命令を出せば済むという段階を越えている、とおれは考える。

 申立人らはすべて定年退職して職場にはいないのだ。不当労働行為制度は過去の紛争に白黒をつけるばかりでなく、将来の紛争当事者の関係正常化をはかることも重要な目的としている。明乳という会社はこれからも企業としての社会的責任を果たさなければならないはずだ。自分の会社で40年も働き、生産に貢献してきた申立人らを「企業破壊者」と烙印を押したまま、話し合いさえ拒絶するということでいいのか。そこのところを説き起こして会社を説得するのも労働委員会の務めではないか。

 いずれにせよこのところ影が薄い戸塚の名前を公の場に出してくれた明乳労務と弁護団に感謝する。まだ舞台裏に引っ込んではいけないと激励されたものと受け止めてもうひと踏ん張りするつもりだ。



2016年04月19日

31)検証・都労委「明治乳業(市川工場)事件」(戸塚章介)。31)ちらつく明乳労組の影 不公正かつたたかう労働者への悪意に満ちた命令書。日本の労使関係を「対決」から「強調」へ変質させようとする権力の意図が透かし見える




検証・都労委「明治乳業事件」 戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)



ちらつく明乳労組の影

 これほど酷い、不公正かつたたかう労働者への悪意に満ちた命令書。そのルーツはどこにあるのか。私の脳裏には明治乳業労組の影がちらつく。これから先は私の推論・推測の域に属するのかも知れない。しかし状況証拠を積み重ねていくとかなりの正確度で「明乳労組の介入」の実態が浮かび上がってくる。

 ここで思い出していただきたいのは92年10月6日に行われた調査期日である。新堂公益委員が会社側に熱心な口調で和解に乗るよう説得した。これに対して調査の場に出ていた労務課職員は「いま職場の人はこの審問に注目している。自分たちの処遇以上に何故申立人らが優遇されねばならないのか。逆に不公平ではないか。この事件は申立人と会社の争いでなく、一般の従業員との争いなのだ」と発言した。

 「職場の人」とか「一般の従業員」とか言ってるが抽象的で分かりにくい。これを「明乳労組」と置き換えてみたらどうだろう。労務課職員の話がよく理解できるではないか。明乳労組は「審問に注目」し「何故申立人らが優遇されなければならないか」と不満を持つ。和解をぶち壊した張本人なのだ。和解をぶち壊すだけではない。申立人らの主張を認めた救済命令は何がなんでも阻止しなくてはならない。

 89年の連合発足まで、食品産業の労働組合は食品労連と食品同盟に分かれていた。ナショナルセンターは、前者が中立労連で後者が同盟である。雪印、森永、明治などの乳業関係は食品労連で、60年から70年代までは総評とともに春闘共闘を組んでいた。しかしその中で明乳労組は、60年代の早くから労使協調路線を歩み食品労連の最右翼と言われた。

 「生産阻害者・企業破壊者の排除」を謳った明乳の労使合意は1966年だが、その後も申立人らを敵視した労使癒着は進行した。連合発足後、食品労連と食品同盟は組織統一して食品同盟となる。連合民間の大産別の一つである。ちょうどその頃、都職労都労委分会も連合・自治労の傘下に入る。

 91年11月に都労委第30期が発足し、労働者委員幹事に全逓出身の成嶋久雄委員が送り込まれた。成嶋幹事は「担当事件の平準化」を強行し、私から「潮流間事件」を取り上げようとした。反連合、非連合の労働者委員を認めず連合独占を謀った。ある時私は連合派職員から「社民を見くびってはいけませんよ」と言われたことがある。成嶋氏が都労委分会と密接な関係を持っていることがうかがわれた。

 反共と労使協調の連合型労働運動路線を労働委員会に持ち込もうとした成嶋都労委労働者委員幹事と「和解も嫌だ」「救済命令も阻止したい」と画策する明乳労組がどこかでドッキングしたことが容易に想像される。明乳労組の願望が成嶋幹事を通じて事務局の幹部や分会に反映したことは否定できない。

 だからといって彼らの意図がそのまま明乳命令になったとは私も短絡的に決めつけるつもりはない。公害事件の複合汚染のようにいろんな要素がからんでいたのだと思う。却下・棄却命令を見越した会社側証人の採用、強引な審査指揮、偏った事実認定、それらは特定多数の共同作業だった。

 労働組合の右翼的再編、総評解体、労働者委員の連合独占といった背景事情のもとに、高田公益委員、末廣使用者委員、成川事務局員、経営法曹の重鎮を揃えた会社側弁護団、中山社長、黒川・沢井・大島・石田・江間・東野らの会社側証人、そして明乳労組が「却下・棄却命令」に的を絞って集中した。日本の労使関係を「対決」から「強調」へ変質させようとする権力の意図が透かし見えるではないか。

2016年04月15日

30)検証・都労委「明治乳業(市川工場)事件」(戸塚章介)。30)「邪魔な証拠は消せ」 第3は笠原ファイルだ。これほど明白な不当労働行為意思の証拠を判断もしないで無視したことは労働委員会のあり方として失格に値する。




検証・都労委「明治乳業事件」 戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)



邪魔な証拠は消せ

 つまり却下・棄却命令の邪魔になる証拠は最初からオフリミットなのである。明乳市川工場命令で「邪魔者は消せ」とばかりにあっさり葬られた重要証拠の一つに「笠原メモ」がある。

 不当労働行為事件の救済のためには、使用者の不当労働行為意思が存在することが認定されなければならない。「意思」というのは人間の心の動きのこと。認定するのはそれほど簡単ではない。使用者が自ら「おれは組合活動を嫌っていた」などと白状するわけがないから、状況証拠を積み重ねて判断するしかない。その際、会社やその周辺で作成したマル秘文書の存在が決め手となることが多い。

 笠原ファイルはマル秘文書として一級品の証拠価値がある。そんなことは労働委員会関係者なら誰でも分かることである。笠原ファイルが、70〜72年の作成当時製造課主任だった笠原利治のノートであることは会社も認めている。つまり真実性の担保された証拠なのだ。

 笠原ファイルは70〜72年の職制連絡会の会議記録である。職制連絡会は明朋会会員から班長以下を除いた係長・主任ら上級職制のみで構成されている。つまり会社の意思が直接伝わる会社直結組織なのだ。会議には会社応接室などが使われ、会社が管理する資料を使った業務上の議題も討議された。

 笠原ファイルには@支部役員選挙で申立人らの進出をどう防ぐか、A職場組合員を赤組(×)白組(○)雑草組(△)に分類して対処する、B赤組の票崩し、白組の拡大、などが討議されたことが記録されている。このあからさまな証拠文書に対し会社側大島証人は@「赤組排除」などは笠原個人の考え、A明朋会とは無縁、B組合選挙に介入したのでなく互いに感想を述べ合っただけ、などと言い訳している。

 命令において「使用者の不当労働行為意思の存否」を判断することは労働委員会としての何よりも大切な責務である。申立人が会社の不当労働行為意思を示すものとして提示し、会社が反論した笠原ファイル。これをどう判断するかは明乳命令のカギを握る。なのに都労委はその判断を姑息にも回避したのだ。

 都労委は明治乳業市川工場事件命令において悪意による少なくとも三つの「事実の無視」を行った。一つは1年半を費やした個別立証を無視したことである。あまりにも空疎な立証であるためまともに判断したら申立人らを救済しなければならなくなる。そこで救済請求を入口で拒絶する却下命令とする。さらに後続の事件を分離して命令対象から外してしまう。これなら個別立証の判断はしなくて済むと踏んだのだ。

 もう一つは1966年(昭和41年)4月20日の「労使確認」である。この労使確認は既に述べたように@合理化の推進、A新職分制度の導入、B生産阻害者・企業破壊者の排除、の3本柱によって成り立っている。この3本柱のうち新職分制度に関わる労使確認のみ事実認定し他は意図的に無視した。

 労使確認は申立人らを生産阻害者・企業破壊者と決めつけ「会社はかかる行為をなしたものについて社業への貢献が期待できないので、これを解雇することができる」と宣言した。解雇さえできるのだから賃金・昇格差別など軽いものだ、ということになる。これが不当労働行為意思でなくてなんだろう。

 第3は笠原ファイルだ。これほど明白な不当労働行為意思の証拠を判断もしないで無視したことは労働委員会のあり方として失格に値する。「邪魔な証拠は消せ」というのではあまりにも不公正ではないか。

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