2016年04月15日

30)検証・都労委「明治乳業(市川工場)事件」(戸塚章介)。30)「邪魔な証拠は消せ」 第3は笠原ファイルだ。これほど明白な不当労働行為意思の証拠を判断もしないで無視したことは労働委員会のあり方として失格に値する。




検証・都労委「明治乳業事件」 戸塚章介(元東京都労働委員会労働者委員)



邪魔な証拠は消せ

 つまり却下・棄却命令の邪魔になる証拠は最初からオフリミットなのである。明乳市川工場命令で「邪魔者は消せ」とばかりにあっさり葬られた重要証拠の一つに「笠原メモ」がある。

 不当労働行為事件の救済のためには、使用者の不当労働行為意思が存在することが認定されなければならない。「意思」というのは人間の心の動きのこと。認定するのはそれほど簡単ではない。使用者が自ら「おれは組合活動を嫌っていた」などと白状するわけがないから、状況証拠を積み重ねて判断するしかない。その際、会社やその周辺で作成したマル秘文書の存在が決め手となることが多い。

 笠原ファイルはマル秘文書として一級品の証拠価値がある。そんなことは労働委員会関係者なら誰でも分かることである。笠原ファイルが、70〜72年の作成当時製造課主任だった笠原利治のノートであることは会社も認めている。つまり真実性の担保された証拠なのだ。

 笠原ファイルは70〜72年の職制連絡会の会議記録である。職制連絡会は明朋会会員から班長以下を除いた係長・主任ら上級職制のみで構成されている。つまり会社の意思が直接伝わる会社直結組織なのだ。会議には会社応接室などが使われ、会社が管理する資料を使った業務上の議題も討議された。

 笠原ファイルには@支部役員選挙で申立人らの進出をどう防ぐか、A職場組合員を赤組(×)白組(○)雑草組(△)に分類して対処する、B赤組の票崩し、白組の拡大、などが討議されたことが記録されている。このあからさまな証拠文書に対し会社側大島証人は@「赤組排除」などは笠原個人の考え、A明朋会とは無縁、B組合選挙に介入したのでなく互いに感想を述べ合っただけ、などと言い訳している。

 命令において「使用者の不当労働行為意思の存否」を判断することは労働委員会としての何よりも大切な責務である。申立人が会社の不当労働行為意思を示すものとして提示し、会社が反論した笠原ファイル。これをどう判断するかは明乳命令のカギを握る。なのに都労委はその判断を姑息にも回避したのだ。

 都労委は明治乳業市川工場事件命令において悪意による少なくとも三つの「事実の無視」を行った。一つは1年半を費やした個別立証を無視したことである。あまりにも空疎な立証であるためまともに判断したら申立人らを救済しなければならなくなる。そこで救済請求を入口で拒絶する却下命令とする。さらに後続の事件を分離して命令対象から外してしまう。これなら個別立証の判断はしなくて済むと踏んだのだ。

 もう一つは1966年(昭和41年)4月20日の「労使確認」である。この労使確認は既に述べたように@合理化の推進、A新職分制度の導入、B生産阻害者・企業破壊者の排除、の3本柱によって成り立っている。この3本柱のうち新職分制度に関わる労使確認のみ事実認定し他は意図的に無視した。

 労使確認は申立人らを生産阻害者・企業破壊者と決めつけ「会社はかかる行為をなしたものについて社業への貢献が期待できないので、これを解雇することができる」と宣言した。解雇さえできるのだから賃金・昇格差別など軽いものだ、ということになる。これが不当労働行為意思でなくてなんだろう。

 第3は笠原ファイルだ。これほど明白な不当労働行為意思の証拠を判断もしないで無視したことは労働委員会のあり方として失格に値する。「邪魔な証拠は消せ」というのではあまりにも不公正ではないか。



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